小学生の英語学習、いつから始めればいいのか問題
| C問題勉強法教科別
いつから英語を勉強すればいいのですか?とよく保護者の方から聞かれます。2020年から学校では小3・小4の英語授業が始まっています。日本の英語教育はどんどん低年齢化していますが、実際のところどうなのでしょう。
今回は英語講師の八田先生に聞いてみました。
八田先生、率直な質問です。
英語の勉強は何年生ごろから始めればいいんですか?
この質問はよく聞かれますが、将来どのレベルをめざすかによります。英検準1級・2級、その先の難関公立高校をねらう前提なら、はっきりとした答えがあります。
その答えをさっそく教えてください!
ズバリ!英語の勉強はいつから始めたらいいのか?
遅くても小学5年から始めないとキツイという印象です。実際に英語を教えていて、中学生になると伸びが鈍化します。もちろん小学5年からでも挽回できますが、相当時間を使って勉強しなくちゃいけません。まあ、個人差はありますが。
遅くても・・・ということは、もっと早いほうがいいと。
あくまで北野、茨木、豊中などの難関公立高校をねらうなら・・・ですよ。言語感覚を身につけるには、なるべく早いほうが有利です。
駿台・浜学園は難関公立高校の専門塾なので、
小学生だと高校受験までたいぶ期間がありますよね?
5年生からだと、受験まで実質5年はあります。でも、学年が上がるにつれ、染み付いてしまう不要な言語感覚があるんです。
学年が上がるにつれ、染み付いてしまう不要な言語感覚
具体的にどんなものですか?
リスニング(聞く)力がいちばん伸びるのが小学生なのですが、その理由は英語という言語に馴染みがないからです。
小学高学年、中学生になると日常生活の会話やメディアを通して、日本語式英語(ジャパングリッシュ)に出会う機会が多くなり、それが染み付いてしまうと正確な英語の発音を聞き取れない、発音できないようになるんです。
日本語式英語というのは、カタカナ英語みたいなものですか?
日本語で発音すると「コーヒー」のような。
はい、「coffee」をそのままカタカナにした発音ですね。正確には「コォーフィ」です。日本語式英語の発音に慣れてしまうと、ネイティブの「コォーフィ」が聞き取れないんです。
これは簡単な例ですが、英語は単語と単語のつながり音が変わります。「check it out!」ですと日本語では「チェック+イット+アウト!」と発音しますよね。単語と単語を切って発音しますが、ネイティブに近くなると「チェキッダゥッ!」となります。
これが英語特有の速さに加わって聞き取りにくくしているんです。
つまり、日本語式英語に馴染んでしまうと、本来の正しい英語感覚に矯正しにくくなるということですか?
さすが駿浜さん、理解が速い!
「コーヒー」と認識する前に「コォーフィ」の発音を入れることで、耳を作っていきます。日本人は成長に伴いどんどん発音できる音が少なくなるので、早い時期から英語に親んだほうがいいと思っています。
公立高校受験まで5年と言いましたが、もちろんまだまだ先です。でも、日本語式英語が染み付く前から美しい英語を聞く、話すことで、矯正期間をショートカットできるだけでなく、中学生以降での吸収が早くなります。
なるほど〜。
そもそも大阪府公立高校の英語試験(C問題)はむずかしいのですか?
そもそもC問題の英語はどれほどむずかしい?
大阪府立高校の英語入試(C問題)は、90点満点のうち大方
・文法:10点
・英作文:10点
・リスニング:30点
・リーディング:40点
になり、リスニングとリーディングが約77%を占めます。
ちなみに大学入学共通テストはリスニングが約50%です。
今後は読む・書く・聞く・話すをバランス良く出題していく方向に向かうようですが、現状ではリスニングとリーディングの割合が多いですね。
77%もリスニングとリーディング!
C問題のリスニングとリーディングは相当むずかしいです。
リスニング(聞く)では、A4用紙1枚ぐらいの長文がネイティブ英語で自然な速度で流れます。それが2回流れて、最後に英語で問題が1つ出て、解答する形です。しかも、英作文で答えないといけない。
最後に何を聞かれるか分からないんです。長く速いネイティブ英語に付いていきながら、ポイントを押さえつつ理解するには、ネイティブ英語への慣れが不可欠ですね。
私には無理です…
リーディング(読み)もハイレベルです。
2020年度のC問題では、長文読解が6題出ました。この読解問題をだいたい1題4分で処理しなくては間に合いません。
ここがみんな間に合わないんですね、読むのが遅くて。一般的な中学生が1分に読める量は70ワードぐらいと言われていますが、C問題では140ワードを読めないと厳しいです。これは大学入試に匹敵するほどのスピードです。
私にはもっと無理です…
なので、リスニング力(聞く力)とリーディング力(読む力)は、避けて通れない必須の能力なんですね。
今後、読む・書く・聞く・話すがバランスある出題になっても、リスニングとリーディングで差が出る可能性が高いです。
これらの能力を高めていくには、遅くても小学5年生からが望ましいと考えています。
小学生の英語でやってはいけない勉強、やったほうがいい勉強
では、小学生では具体的にどんな英語学習をすればいいのですか?
小学生では、特別な学習をする必要はありません。楽しい英語の物語本を読んで、いっしょに発音することに専念したほうがいいですね。
え、それだけですか?
美しい英語を聞いて、耳をつくっていくのが重要ですから。
いちばんやってはいけない勉強は文法です。特に小学生で文法を教えると、一瞬で英語嫌いになります。まず勉強がつづきません。あと単語の暗記もダブーです。
私も文法は大嫌いです。理屈っぽくて英語に対する抵抗感が出ます。
英語はすごく論理的な言語なので、そこから入ると嫌になっちゃいますよね。なので、文法は一切やらずに、「聞く」と「話す」ことに専念します。
具体的には、ABCが書けない状態で、いきなり絵本を読み始めます。子どもたちがなんとなく知っている内容の本、例えば、日本昔はなし、金太郎、桃太郎、ピーターパンなど、簡単な物語から進めていきます。
それは楽しそうですね。
小学中学年ぐらいになると、ある程度母国語を習得しているので、書くよりもいっぱい発話する、目で見て、音を口に出すことを繰り返します。
英語には日本語にない摩擦音がいっぱいあるんです。なので耳に染み込ませて、顔の筋肉の動き、脳みその揺れ方、喉の揺れ方などを自分で触りながら体感していくんですね。
その経験を繰り返すと、日本人には聞き分けられない音が聞き分けられるようになってきます。そうなったら、しめたもん!です。
日本語式英語(ジャパングリッシュ)を覚えてしまう前に、美しい英語に触れることが重要。だから遅くても小学5年から、ということですね。
そうですね。
小学生〜中1生までは、①多読 ②発音 ③ネイティブとの対話、これだけで十分です。
中2生・中3生から基礎文法を定着させて、英作ができるように指導しています。
2020年から始まった小学校の英語授業は、英語習得を後押しするのか?
2020年から小学3・4年生は外国語活動として、週1コマの英語活動が授業で始まりましたが、それはいいことなのですね。
日本の英語教育が低年齢化するのはとてもいいことです。授業ではかんたんな日常英語を「聞く」「話す」のが中心で、英語学習への意欲を高めるのに役に立つと感じます。
なら、どんどん英語ができる子どもが増えていく…。
ただ、先ほどお伝えしたとおり「美しい英語」を聞くことが大切です。
小学校の要領では、学級担任が行うことになっていますが、全員の先生が英語の習得者ではありませんよね。そこで日本語式英語(ジャパングリッシュ)が身についてしまう可能性があります。
専科指導の教師やネイティブスピーカーの教師による授業は小学校5・6年からになるので、そこで美しい英語が定着すればいいのですが。
小学生〜中1生までは「①多読 ②発音 ③ネイティブとの対話」と言いましたが、小学生でネイティブとの対話を繰り返すと、驚くほど上達しますよ。
やはりネイティブ強し!ですね。
うちの塾では、週1回オンラインでネイティブの先生とのマンツーマンレッスンをしています。塾で習った内容をベースに発音チェックをしてもらい、たくさん褒めてもらう経験を繰り返します。
これがビックリするほど伸びるんです。
英検2級取得はむずかしくない
C問題の英語に話を戻しますが、英検2級の取得が当日の試験で有利になりますよね。
見なし点(読み替え得点)ですね。現状では、英検2級で入試当日の点数の80%、準1級で100%が保証されています。
ということは、入試前に英検2級以上を取得できれば、試験当日はラクになると!
現状ではそうなりますね。
実際に駿台・浜学園では、中3生の公立受験者の78%が英検準1級・2級を取得しているので(2021/12/27段階 本年中3生の結果)、英語試験に有利になるだけでなく、他教科に力を入れることができます。
それはすごい。
英検2級を取得するのは、そんなにむずかしくないんです。
そうなんですか?みんな必死に勉強してますけど。
そんなにむずかしなら、毎年たくさんの生徒が取得できないはずです。
言われてみればそうですね。
先ほどお伝えしたような勉強を普通にしていれば、合否のボーダーラインにはいけます。そこから確実に受かるようにするには、個別対応でのプラン作成が必要になってきますね。うちの塾は少人数制なので、それが可能なんですよ。
英検対策の講座はしてるのですか?
そういった特別授業は行っていません。通常の授業内ですべて完結しています。
特別授業を実施する塾がほとんどですが、一律の授業では「すでにできている子」しか受からないんです。特別授業を3・4回受けて受かる子は、何もしなくても受かるはずです。
駿台・浜学園では「通常授業+個別対応」になっています。個別対応といっても、英語に限らず普段からつねに行っている指導なので、特別なものではありません。
なるほど
大阪府公立高校入試の見なし点についてですが、この保証はずっと続くかといえばそうではありません。今の保証はちょっと行き過ぎに感じますね。今後どうなるか分かりませんが、この状況がつづくと思わないほうがベターですね。
なので、C問題であれ英検2級であれ、対応できる英語力をつけておくことが必要です。
駿浜さんの今日のまとめ
ここまでの話をまとめると、
◯難関公立高校をめざすなら、英語の勉強は遅くても小学5年生から始めたい。
◯日本語式英語が染み付いてしまう前に、美しい英語に触れる機会を増やすこと。
◯小学生は英語の勉強で文法、単語の暗記はダブー。楽しい英語の物語を見て聞いて発音して、体で体感していく。
◯小学生〜中1生までは、①多読 ②発音 ③ネイティブとの対話で十分。基礎文法は中2生から。
という感じですか。
うまくまとまりました(笑)。
言語というものは、習得に時間がかかります。日本語だって生まれてから何年もかけて、毎日日本語づけの生活の中からやっと獲得していきますよね。
英語も同じで、小学生からネイティブに近い英語に触れることで耳をつくっていく。なるべくまっさらな状態から始めたほうがいい、ということです。
八田先生、ありがとうございました!